Archive for the ‘休業損害’ Category

むち打ちと休業損害(専業主婦、又は、兼業主婦) 

2016-10-15

私は、兼業主婦ですが、追突事故に遭遇し、むち打ちと診断されました。この場合、休業損害については、パートを休んだ分(1ヶ月程度)だけだと言われましたが、どうなのでしょう。

専業主婦又は兼業主婦の方が事故に遭われ、パートを休む、又は、家事労働が制限された場合、パートを休んだ分だけの保障しかしてくれないことも多いことかと思われます。

中には、事故後1ヶ月程度につき、自賠責基準における算定などを基準に主婦としての休業分も保障してもらえる場合もあります。

しかし、本来、主婦の方も兼業主婦の方(パート収入の額が女性・全年齢平均賃金センサスの額を下回る場合に限ります)も、女性・全年齢平均賃金センサスを基準として、主婦としての休業損害が認められます。

この賃金センサスにより算出される収入の基礎としては、日額1万円程度(平均賃金の額は年により変動しますので、若干の変動があります)となりますので、多くの場合で、パート収入よりも高額となります。

実際に得られる金額ですが、これは損保会社によってかなりばらつきがあり、通院日×1万円程度で計算される場合もあれば、段階的・割合的な認定方法が採用される場合もあります。

いずれにしても、主婦の方も兼業主婦の方(パート収入の額が女性・全年齢平均賃金センサスを下回る場合に限ります)も、女性・全年齢平均賃金センサスを基準として、主婦損(休業損害)が認められますので、弁護士に依頼して主婦損(休業損害)を請求してみても良いかもしれません。

兼業主婦の休業損害

2016-05-10

兼業主婦の休業損害はどのように計算するのですか。

着目すべき裁判例があります。

<神戸地裁平成12年9月26日判決 交民33巻5号1555頁(以下「本判決」といいいます)>

大前提として、主婦業も財産的価値のある仕事ですので、交通事故により主婦業に影響が出た場合、その部分の補償してもらえます。

次に、休業損害は、事故により収入が減少した部分の賠償ですので、主婦の場合、幾らの減収があったのが問題となりますが、主婦の場合、減収を算定する際の基礎賃金は、女性平均賃金とするのが一般的です。

そして、いわゆる兼業主婦の場合、現金収入額が女性平均賃金より高ければ現金収入額を、そうでない場合は女性平均賃金額を基礎収入額と認定します。

不合理かもしれませんが、家事労働分に現金収入額を加えたりはしない扱いとななっています(最高裁昭和62年1月19日判決民集41巻1号1頁、判時1222号24頁、判タ629号95頁)。

もっとも、本判決は、有職の主婦の場合と専業主婦の場合とを同一に論ずるのは相当ではないとして、賃金センサス女子労働者学歴計全年齢平均額341万7900円にパート収入の年額55万2000円を加えると396万9900円となることを前提に、この額は、年齢別(35歳ないし39歳)平均賃金額389万9100円とほぼ等しいので、年齢別平均賃金額の389万9100円を基礎収入とすべきだとしました。

本判決は、実質的には、兼業主婦の場合に、女性平均賃金と実際のパート収入を合算して休業損害を算定したものと言えるでしょう。

同判決が一般的にどのような事例にも当てはめるかというと、そうではないと思われますが、廉価に抑えられていた交通事故の賠償実務に一石を投じる判決であると思われます。

 交通事故と間接損害

2016-04-07

交通事故によって会社の役員などが受傷し、就労が出来なくなり、会社の売上が減少するなどの損害を受けた場合、会社から加害者へ損害賠償の請求ができますか。

    1. まず、間接損害とは、①反射損害と②固有損害に分類されます。
      反射損害とは、企業のなどが受傷して就労できなかった期間も会社が役員報酬や給料を支払い、それを損害として請求するものです(肩代わり損害,転化損害)。
      固有損害とは、企業の代表者や従業員が受傷して就労できなかった企業の売上が減少したことなどによる損害です。
    2. 反射損害については、概ね認められております(裁判例の中には、「法人格を有する会社の役員が、交通事故で負傷し、その就労が不可能又は制限されている場合、会社において、従前どおり、取締役報酬を支払っていた場合、本来、会社の役員が加害者に請求できる損害を肩代わりしたものとして、会社は、民法422条の類推適用あるいは、同法499条、500条の類推適用により、上記肩代わり分(以下「反射損害」という。)を、加害者に対し、請求できると解される。」と指摘するものがあります。平成25年11月7日/熊本地方裁判所/民事第2部/判決/平成24年(ワ)855号
    3. もっとも、②固有損害に関しては、容易には認められておりません。
      「会社の役員の負傷により、会社自体が被る代替人件費の増加分や売上額の減少等の会社固有の損害(間接損害)については、身体傷害の場合における被害者、すなわち、侵害行為の対象となった保護法益の主体は、その身体を負傷した当人以外にあり得ないから、これを加害者に請求することは、原則としてできないが、法人とは名ばかりで、実質的にはいわゆる個人会社であり、その実権が当該個人に集中し、同人に当該法人の機関としての代替性がなく、経済的に当該個人と当該法人とは一体をなす関係にあるといえる場合には、当該個人に対する加害行為と同人の受傷による当該法人の利益の逸失との間には、相当因果関係があると認めるのが相当である(最高裁昭和43年11月15日判決[民集22巻12号2614頁]参照)などと指摘されます
    4. つまり、固有損害としての企業損害が認められる要件は相当厳しいもので、容易には認められておりません。なお、当該法人の機関としての代替性がなく、経済的に当該個人と当該法人とは一体をなす関係か否かは、会社の資本金額・売上高・従業員数等の企業規模、直接被害者の地位・業務内容・権限・会社財産と個人財産の関係、株主総会・取締役会の開催状況等を総合考慮して決することになるでしょう。

 

家事労働者、家事従事者とは

2015-12-10

家事従事者であれば休業損害も主婦の分が補償されると聞きましたが、私の夫は既に他界しております。主婦としては認められますか。

家事従事者と認められるのは、自分以外の家族のためにする家事労働を行っていたことが前提となります。

ですので、自分自身のためだけに家事を行っていたとしても、休業損害及び後遺障害逸失利益の算定の基礎として、家事従事者の賃金(女性全年齢平均賃金)を基にこれを計算することはできません。

同様の判断を行った裁判例としては、名古屋地裁平成12年8月30日判決(交民3巻4号1407頁)があります。

本裁判では、被害者は有職の主婦であるから賃金センサスを休業損害の基礎とすべきと主張するが、本件事故当時夫は既に死亡し、本件事故当時はたまたま娘が同居していたものの、娘は30歳を超した既婚者であり夫が単身赴任であったために原告宅にいたものであって当時稼働していた様子もないとして、これらの生活状況に照らすと、Aが前記の収入以外に一家の主婦としても稼働していたとは認めることができないから、賃金センサスを用いて基礎収入とすることはできない、と判断されております。

もっとも、 娘が独身であって稼働している場合などでは、判断は異なる可能性があり、要するに、他人のためにどれだけの家事労働をしていたのか、という点が重要となります。

家事従事者としての休業損害が認められるか否かは損害賠償額にも大きく影響しますので、疑問などがある方は一度弁護士に相談しても良いかもしれません。

 

休業損害と解雇・任意退職

2014-11-05

私は、追突事故に遭い、仕事を長らく休業しておりましたが、その後会社から復帰できないようであれば、退職するように言われました。この場合の、休業損害と任意退職に関する賠償金ついて教えて下さい。

まず、休業損害は、事故の影響で、仕事を休んだ場合に、現実に収入が下がった場合に発生します。

また、有給休暇を使用した場合でも、休業損害が発生します。

では、事故により退職を余儀なくされたり、解雇された場合はどうでしょうか。

結論としては、事故と解雇又は退職との間に相当因果関係がある場合とそうでない場合とで結論が異なる、ということになります。

簡単に言えば、事故が原因で解雇又は退職を余儀なくされた場合といえるか否かがポイントになります(事故とは無関係に自分の意思で退職した場合や、全く別の原因で解雇された場合は、事故の影響とは言えないということです)。

この因果関係の判断において最も重要な点は、①事故の衝撃の強さ、②症状名(他覚的所見の有無)、③職種・勤務内容でしょう。

強度の事故で、重度の後遺障害が残ってしまい、手足が不自由になってしまった場合で、肉体労働の方がその職務を継続するのは不可能であるときなどは、事故と退職等との間に因果関係ありと判断して良いと思われますが、軽微物損事故の場合に、任意に退職した場合には、因果関係は認められないという結論になるでしょう。

なお、事故と解雇又は退職との間に相当因果関係がある場合とそうでない場合においては、休業損害(正確には、退職等によって喪失した本来得られるべきであった収入から、再就職した後に得た収入又は再就職により得べかりし収入を控除した差額)が認められると考えるべきでしょう。

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