交通事故と間接損害

2022-03-27

交通事故によって会社の役員などが受傷し、就労が出来なくなり、会社の売上が減少するなどの損害を受けた場合、会社から加害者へ損害賠償の請求ができますか。

 

【間接損害とは】

まず、間接損害とは、①反射損害と②固有損害に分類されます。
反射損害とは、企業のなどが受傷して就労できなかった期間も会社が役員報酬や給料を支払い、それを損害として請求するものです(肩代わり損害,転化損害)。
固有損害とは、企業の代表者や従業員が受傷して就労できなかった企業の売上が減少したことなどによる損害です。

【反射損害】

反射損害については、概ね認められております(裁判例の中には、「法人格を有する会社の役員が、交通事故で負傷し、その就労が不可能又は制限されている場合、会社において、従前どおり、取締役報酬を支払っていた場合、本来、会社の役員が加害者に請求できる損害を肩代わりしたものとして、会社は、民法422条の類推適用あるいは、同法499条、500条の類推適用により、上記肩代わり分(以下「反射損害」という。)を、加害者に対し、請求できると解される。」と指摘するものがあります。平成25年11月7日/熊本地方裁判所/民事第2部/判決/平成24年(ワ)855号

【固有損害】

もっとも、②固有損害に関しては、容易には認められておりません。
「会社の役員の負傷により、会社自体が被る代替人件費の増加分や売上額の減少等の会社固有の損害(間接損害)については、身体傷害の場合における被害者、すなわち、侵害行為の対象となった保護法益の主体は、その身体を負傷した当人以外にあり得ないから、これを加害者に請求することは、原則としてできないが、法人とは名ばかりで、実質的にはいわゆる個人会社であり、その実権が当該個人に集中し、同人に当該法人の機関としての代替性がなく、経済的に当該個人と当該法人とは一体をなす関係にあるといえる場合には、当該個人に対する加害行為と同人の受傷による当該法人の利益の逸失との間には、相当因果関係があると認めるのが相当である(最高裁昭和43年11月15日判決[民集22巻12号2614頁]参照)などと指摘されます

つまり、固有損害としての企業損害が認められる要件は相当厳しいもので、容易には認められておりません。なお、当該法人の機関としての代替性がなく、経済的に当該個人と当該法人とは一体をなす関係か否かは、会社の資本金額・売上高・従業員数等の企業規模、直接被害者の地位・業務内容・権限・会社財産と個人財産の関係、株主総会・取締役会の開催状況等を総合考慮して決することになるでしょう。

 

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2016 石田法律事務所 All Rights Reserved.