兼業主婦の休業損害
兼業主婦の休業損害はどのように計算するのですか。
着目すべき裁判例があります。
<神戸地裁平成12年9月26日判決 交民33巻5号1555頁(以下「本判決」といいいます)>
大前提として、主婦業も財産的価値のある仕事ですので、交通事故により主婦業に影響が出た場合、その部分の補償してもらえます。
次に、休業損害は、事故により収入が減少した部分の賠償ですので、主婦の場合、幾らの減収があったのが問題となりますが、主婦の場合、減収を算定する際の基礎賃金は、女性平均賃金とするのが一般的です。
そして、いわゆる兼業主婦の場合、現金収入額が女性平均賃金より高ければ現金収入額を、そうでない場合は女性平均賃金額を基礎収入額と認定します。
不合理かもしれませんが、家事労働分に現金収入額を加えたりはしない扱いとななっています(最高裁昭和62年1月19日判決民集41巻1号1頁、判時1222号24頁、判タ629号95頁)。
もっとも、本判決は、有職の主婦の場合と専業主婦の場合とを同一に論ずるのは相当ではないとして、賃金センサス女子労働者学歴計全年齢平均額341万7900円にパート収入の年額55万2000円を加えると396万9900円となることを前提に、この額は、年齢別(35歳ないし39歳)平均賃金額389万9100円とほぼ等しいので、年齢別平均賃金額の389万9100円を基礎収入とすべきだとしました。
本判決は、実質的には、兼業主婦の場合に、女性平均賃金と実際のパート収入を合算して休業損害を算定したものと言えるでしょう。
同判決が一般的にどのような事例にも当てはめるかというと、そうではないと思われますが、廉価に抑えられていた交通事故の賠償実務に一石を投じる判決であると思われます。