過失相殺
過失相殺とは?
過失相殺とは、交通事故の被害者の側にも、事故発生及び損害の発生について、落ち度があった場合に、その落ち度の程度に応じて、損害額を差し引くというものです。
(民法722条2項)。
交通事故と過失相殺
いわゆる、10対0の事故(追突事故など)以外では、必ずこの過失相殺が問題になります。
過失割合を数字で明確に割り出すということ自体とても難しく(7対3といっても、正確には6.9対3.1かもしれないですし、また違った数字になるかもしれません。パーセントは寸分の狂いなく割り出すのは実際問題としては不可能に近いでしょう)、それ故、交通事故実務では、事故の態様を類型化して基本的な過失割合を論じた判例タイムズという書籍をもとに双方の過失の割合を導いています。
保険会社の対応
保険会社側は、この判例タイムズを尺地定規に適用して過失割合を主張されますが、実際の裁判ではこの判例の基準を個別具体的な事案に応じて修正していくことも多々あります。
そのため、交渉の段階から、しっかりと資料を集めて記憶を整理しておくことがとても重要になります(特に、交通事故の具体的な状況に関する記憶は、時間の経過と共に薄れていきます)。
ですので、交渉の段階から専門家である弁護士に相談する等して、しっかりと交通事故の態様を整理しておくことが重要でしょう。
被害者側の過失
例えば、夫の運転する車に同乗している際に、その車と加害者の車両が衝突事故を起こしたとします。この時の過失の割合が、夫1割、相手方が9割とします。この場合に、妻が相手方に対して損害賠償請求を行うとき、夫の過失である1割を、被害者側の過失としても考慮し、損害額から1割を差し引く理論を、被害者側の過失の理論といいます。
判例も、被害者と身分上・生活上一体を成すとみられるような関係にある者を、「被害者」側の過失としてしん酌する旨判示しており、その典型例は配偶者等です。
損益相殺
過失相殺とは異なるのですが、少し似た概念として、損益相殺というものがあります。
損益相殺とは、簡単に言うと、当該交通事故に起因して、利益を得た部分を最終的な損害額から差し引くというものです。
損益相殺されるものとされないもの
損益相殺されるもの
・ 加害者からの弁済や任意保険会社からの支払い
・ 自賠責保険からの支払い
・ 遺族年金、遺族一時金、遺族年金前払い一時金
・ 国民年金法による遺族基礎年金
・ 厚生年金保険法による遺族厚生年金
・ 公務員等共済組合法による遺族年金
・ 無保険者傷害保険金及び人身傷害補償保険金(もっとも、厳密には、これらは損益相殺というよりは、保険代位による効果です)
損益相殺されないもの
・ 見舞金、香典等
・ 労災保険法による特別支給金等
・ 搭乗者傷害保険金、自損事故保険金、生命保険金等(これらは既に払い込んだ保険料の対価であること等から損益相殺の対象にはされません)