修理しない場合の修理費用にかかる消費税
車両を修理しない場合、修理費用に関する消費税は、損害に含まれますか。
結論として、これを否定する裁判例も存在しておりますが、理論的には、車両を修理する場合には、消費税が発生する以上、その金員を何に使用するかは損害賠償義務者が関与するところではなく、消費税額を含めた金額が、相当な修理代金とみるべきであると考えられます。
つまり、消費税も損害に含まれる、という結論になります。
これと同様の判断を行った裁判例(東京地裁平成18年3月27日判決(交民39巻2号370頁))も、以下の通りの判断をしております。
第三 争点に対する判断
一 争点(1)ア(原告車両は、本件事故により経済全損となったといえるか。)について
(1)ア 証拠(甲五、六、乙二)及び弁論の全趣旨によれば、原告車両の修理費用に関し、訴外ヤナセは、平成一六年六月三日付けで、修理費用合計四三七万九九七〇円(うち定価合計四一七万一四〇〇円、消費税額二〇万八五七〇円)とする概算見積書(甲五)及び修理費用合計三九六万三五〇八円(うち定価合計三七七万四七七〇円、消費税額一八万八七三八円)とする概算見積書(甲六)をそれぞれ発行し、さらに、訴外ヤナヤは、同月七日付けで、修理費用合計三七七万四七七〇円(うち定価合計三七七万四七七〇円、消費税額〇円)とする概算見積書(乙二)を発行していること、同日、訴外ヤナセと被告ら側保険会社との間で、修理費用を三七七万四七七〇円とする修理協定が結ばれたこと、その際、原告会社において原告車両を修理しない方針であったことから、この修理協定は仮協定とされたことがそれぞれ認められる。証人丙川は、乙二の概算見積書が提示され、その金額が原告会社が事前に聞いていた額より低額であったことから訴外ヤナセに対して説明を求めたところ、その二、三日後に、約四三〇万円との修理代金が口頭で提示された旨証言するが(証人丙川)、このような証言を裏付ける客観的証拠は存在しない。
イ このような経緯からすると、修理費用を合計四三七万九九七〇円(消費税込み)とする平成一六年六月三日付け概算見積書は、もはや効力を失ったものと解するのが相当である。
ところで、平成一六年六月七日付け概算見積書にある三七七万四七七〇円との金額は、平成一六年六月三日付け概算見積書のうち修理費用合計三九六万三五〇八円(消費税額込み)とするもの(甲六)から消費税額相当額を控除した金額と同額であり、また、その明細を見ても、全く同一である。すなわち、平成一六年六月七日付け概算見積書記載の金額は、同年三日付け概算見積書(修理費用合計を消費税込みで三九六万三五〇八円とするもの)と全く同一で、ただ、消費税額だけを〇円としたものと認められる。被告乙山らは、最終的に修理費用を三七七万四七七〇円とすることで協定が結ばれていることを根拠に、この金額をもって相当な修理代金と主張する。しかしながら、平成一六年六月七日付け概算見積書が作成された時点で、原告車両が修理されないことがその前提になっていたものと認められる(乙二)ところ、消費税とは、事業者が行った資産の譲渡等につき事業者に対して課せられるものであり(消費税法四条一項、五条一項)、現実に車両を修理しない場合には発生しないものであることから、平成一六年六月三日付け概算見積書のうち修理費用合計三九六万三五〇八円(消費税額込み)とするものに加えて、最終的に消費税額を〇円とする平成一六年六月七日付け概算見積書が作成されたものと解するのが相当である。
このようなことからすると、仮に原告会社が原告車両を修理する場合には、消費税が発生するのであるから、消費税額を含めた三九六万三五〇八円をもって、相当な修理代金とみるのが相当である。